
香り立つグラッパの世界
ワインを造る過程で、どうしても出てしまう残り滓。果皮や種、茎など、ワインには使われなかったぶどうの部分ですが、実は、まだたくさんの香りや味わいの成分が残っているのです。この残り滓を蒸留して造られるのが、今回ご紹介するお酒、グラッパです。一見すると、捨てるしかないように思えるぶどうの残り滓ですが、そこにはぶどうの命の結晶が、まだ隠れているのです。古くからイタリアの人々は、この残り滓を無駄にせず、知恵と工夫を凝らして蒸留酒を造ってきました。それが、グラッパの始まりです。イタリアの家庭では、昔から自家製のグラッパが造られてきました。農作業を終えた後の一杯や、家族が集まる食卓には、必ずグラッパがあったそうです。それぞれの家庭で受け継がれてきたグラッパの製法は、まるで土地の風土や人々の暮らしを映す鏡のようです。かつては自家製のものが多かったグラッパですが、近年は高品質なグラッパを造る蒸留所も増えてきました。丁寧に選別されたぶどうの品種、こだわりの蒸留方法、そして熟成によって、香り高くまろやかな味わいのグラッパが生み出されています。今では、イタリアを代表する蒸留酒として世界中に知られるようになったグラッパ。その奥深い味わいと香りは、多くの人々を魅了し続けています。ぶどうの命を余すことなく使い切る、イタリアの知恵と工夫が詰まったお酒、グラッパを、ぜひ一度味わってみてください。