
高温糖化酛:日本酒造りの奥深さを探る
お酒造りの最初の段階で、お酒のもととなる酵母を育てる工程はとても大切です。この工程で使われるのが酛(もと)と呼ばれる酒母で、いわばお酒作りの土台となるものです。酛造りの方法はいくつかありますが、それぞれで出来上がるお酒の風味や香りが大きく変わります。今回は数ある酛の中でも、高温糖化酛と呼ばれる製法について詳しく見ていきましょう。高温糖化酛はその名前の通り、高い温度環境を利用して作られます。高い温度帯で作業することで、他の菌が繁殖するのを抑え、必要な酵母だけを純粋に育てられます。この方法は、雑菌による影響を受けにくいため、安定した品質のお酒を造るのに役立ちます。具体的には、蒸した米と麹と水を混ぜ合わせ、約55度から60度という高い温度で糖化を進めます。この温度帯は、麹に含まれる酵素が活発に働くのに最適な温度です。高温で糖化を進めることで、雑菌の繁殖を抑えつつ、米のデンプンを糖に変える作業を効率的に行えます。こうして出来た糖分を酵母の栄養源として、酵母を育てていきます。他の酛と比べて、高温糖化酛は比較的短い期間で仕上がるという利点があります。そのため、大量生産に向いており、安定した品質管理もしやすいという特徴があります。こうして育てられた酵母は、その後、大きなタンクで仕込まれる醪(もろみ)に加えられ、本格的なお酒造りが始まります。高温糖化酛によって造られたお酒は、すっきりとした飲み口で、穏やかな香りが楽しめます。このように、高温糖化酛は、安定した品質のお酒を造る上で重要な役割を担っています。一見複雑に見えるお酒造りですが、一つ一つの工程を理解することで、よりお酒の奥深さを感じることができるでしょう。今回は高温糖化酛に焦点を当てましたが、他にも様々な酛造りの方法があります。それぞれの違いを知ることで、お酒選びの楽しみも広がるのではないでしょうか。