高粱

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幻の銘酒、茅台酒の世界

中国貴州省、深い山々に囲まれた茅台鎮。そこに流れる赤水河の恵みと、独特の気候風土が生んだ銘酒、それが茅台酒です。その歴史は古く、三百年前の清王朝時代まで遡ります。人里離れた山間の小さな村で産声を上げたこのお酒は、時を経て中国全土にその名を知られるようになりました。茅台酒の製造には、一年をかけてじっくりと熟成させる独特の製法が用いられています。地元で採れる高粱という穀物と小麦を原料に、蒸し、仕込み、発酵、蒸留といった工程を七回も繰り返すのです。この複雑な工程こそが、茅台酒特有の芳醇な香りとまろやかな味わいを生み出す秘訣と言えるでしょう。さらに、赤水河の水質と茅台鎮の湿潤な気候も、このお酒の味わいを深く複雑なものにしています。まさに、天の時、地の利、人の技が三位一体となって生まれた奇跡のお酒と言えるでしょう。古来より、茅台酒は歴代の皇帝や高官たちに愛されてきました。宮廷の宴席に欠かせない存在として振る舞われただけでなく、特別な贈答品としても珍重されたのです。清王朝時代最後の皇帝、溥儀も茅台酒をこよなく愛した一人として知られています。新中国建国後も、国家の重要行事や国賓をもてなす席には必ず茅台酒が用意されるなど、中国を代表するお酒として、国の威信を象徴する存在であり続けています。現代においても、茅台酒は中国を代表する高級酒として、多くの人々を魅了し続けています。その深い歴史と伝統、そして比類なき風味は、世代を超えて受け継がれ、これからも中国の文化と共に歩み続けることでしょう。まさに、中国の歴史と文化が凝縮された一杯と言えるのではないでしょうか。
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白乾児:華北の魂の酒

高粱の恵みを受けて生まれた蒸留酒、白乾児は、中国北部、特に華北地方の食文化を語る上で欠かせない存在です。華北地方は乾燥した厳しい気候風土で知られていますが、この地で力強く育つ作物こそが高粱です。他の穀物が育ちにくい環境でもしっかりと根を張り、実をつける高粱は、人々にとって貴重な食糧であり、生活の支えとなってきました。この高粱を原料として生まれた白乾児は、まさに大地の恵みそのものを体現するかのようです。高粱を蒸して麹菌を加え、発酵、蒸留という工程を経て作られる白乾児は、原料である高粱由来の独特の甘みと芳醇な香りが特徴です。口に含むとまず高粱本来の甘みが広がり、その後を追うように力強い香りが鼻腔を抜けていきます。この香りは、高粱が厳しい環境の中で育つ中で培われた力強さを感じさせる、滋味深いものです。そして、白乾児のもう一つの特徴は、その高いアルコール度数です。一般的に50度から60度と高く、一口飲めば体が内側から温まるのを感じます。この力強い味わいは、厳しい寒さの中で暮らす人々にとって、体を温め、活力を与える大切な役割を果たしてきたことでしょう。白乾児は、古くから人々の生活に深く根付いてきました。冠婚葬祭などの祝い事には欠かせないお酒として振る舞われ、また、一日の仕事の疲れを癒す晩酌としても愛飲されてきました。人々は白乾児を酌み交わしながら喜びを分かち合い、明日への活力を養ってきたのです。華北地方の風土と人々の暮らしの中で育まれてきた白乾児は、まさにその土地の魂を宿したお酒と言えるでしょう。