日本酒 日本酒造りの要、掛流し
日本酒は、米と水、麹、酵母という簡素な原料から、深い味わいが生まれる醸造酒です。その製造方法は、古くから伝わる伝統的な技と、現代の技術が一つになった、とても繊細なものです。数ある工程の中でも、洗米を終えた後の白米を水に浸す「掛流し」は、日本酒の味わいを決める重要な工程です。掛流しは、単に米の表面についた糠や汚れを取り除くだけではありません。米にどれだけの水を吸わせるのか、どれだけの時間をかけて吸わせるのかによって、米の硬さや水分量が変わり、これこそが日本酒の出来栄えを左右する重要な要素となります。掛流しで米に含まれる水分量を調整することで、後の工程である蒸米、麹づくり、酒母づくり、醪仕込み、そして発酵に大きな影響を与えます。例えば、掛流しの時間が短いと、米の中心まで十分に水が浸透せず、蒸米の際にムラが生じ、麹菌の繁殖が均一になりません。結果として、雑味のある日本酒になってしまうことがあります。反対に、掛流しの時間が長すぎると、米が水を吸いすぎて柔らかくなり、蒸米がベタベタになり、これもまた望ましい状態ではありません。最適な掛流しの時間と水加減は、使用する米の品種、その年の米の状態、そして目指す日本酒の風味によって異なります。杜氏は、長年の経験と勘、そして五感を頼りに、その都度最適な掛流しを判断します。このように、一見単純に見える掛流しという工程一つとっても、杜氏の技と経験が凝縮されており、日本酒の奥深い味わいを生み出すために欠かせない工程と言えるでしょう。掛流しは、まさに日本酒づくりの出発点であり、その後の全ての工程の土台となる重要な役割を担っているのです。日本酒を味わう際には、ぜひこの掛流しの重要性を思い出し、その繊細な味わいの奥に隠された、杜氏の技術と情熱を感じてみてください。
